平成22年03月31日 衆議院厚生労働委員会
本日は、限られた時間ですので、三点の課題について質問させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
先日、何げなく新聞を見ておりましたら、資料一にございますように、何と、ホームレスの知的障害者が三四%という驚くべき数字が目に飛び込んでまいりました。実は、この件は私自身、大変気になっていたことでしたので、すぐに厚生労働省の方にお聞きしたところ、資料三に基づいて説明を受けたのですが、厚労省の統計では、ホームレスの中で知的障害者はおよそ一%ということでした。
さまざまな調査方法がありますので、当然、数字に乖離はあるとは思うんですけれども、余りにも数字に開きがあるのですが、一体どちらが正しい結果なのかと考えますと、厚労省の調査は、単に、障害手帳をあなたは持っていますか、持っていませんかというような質問だった、そういったことで判断しているとお聞きしました。大変申しわけないんですけれども、こういった形だと正確な数字を全く把握できない、私はそのように思います。
特に、障害を持った方に関して、九四・六%の人が持っていないと答えたとありますけれども、なかなか本人が、特に知的障害者の方はそうなんですけれども、自分は障害を持っていますと答えないんじゃないかと私は思います。
そしてもう一つ、常日ごろから疑問に思っている数字がございます。厚生労働省から発表の障害者の人数は七百二十四万人となっていまして、内訳は、身体障害者がおよそ三百六十六万人、精神障害者がおよそ三百二万人、そして知的障害者がおよそ五十五万人ということでございます。
私は、率直に申し上げて、知的障害者が実際の、実態の数字とかけ離れているように感じてなりません。現に、ホームレスの中の知的障害者はカウントに入っていないというお話も伺っております。ですから、少なくともその分は反映をされておりません。数字を把握するということは、当然、実態調査の基本でありまして、対策を立てるにしても、正確に事態を見詰める力を持たなくては有効な対処法も見出しにくいと考えます。
まずは、ホームレスの知的障害者に対する調査の方法につきまして、妥当なのかどうか、福祉分野で私が尊敬してやまない山井政務官にぜひお聞きしたいと思います。決して足立政務官を尊敬していないというわけではありません。
〔委員長退席、中根委員長代理着席〕
○山井大臣政務官 御質問ありがとうございます。
一言で言いますと、療育手帳を持っていない知的障害者の方がかなりおられるのではないだろうかということに尽きると思うんです。私も、この間、障害者福祉をライフワークの一つとしておりますが、同様の問題意識を持っておりまして、委員御指摘のように、実態を正確に把握していない、過小に把握していると、対策も過小なものにしかなり得ないという問題点があると思います。
そして、御指摘の、三四%ということに関しては、新聞に取り上げられたわけでありますが、昨年末に東京池袋で臨床心理士の方々が知能指数の検査を行ったものであり、七〇未満ということで、この新聞報道にも出ておりますが、三四%であったと。
これは調査方法が違うのですが、厚生労働省が行った調査では、平成十五年の調査時に百名以上の報告のあった自治体において、自治体職員などがホームレスの方々に障害の有無や障害者手帳の有無について聞き取り調査を行ったら、五・四%であったということであります。これは調査の手法は違うわけですが。
この新聞に取り上げられた調査によりますと、ホームレスの方の約六割がうつ病などの精神疾患を抱えている疑いも判明しているということで、IQが四〇から四九の方は、家族や支援者と同居しなければ生活が難しい、五〇から六九の方は、金銭管理が難しく、行政や市民団体による社会的サポートが必要というふうにも指摘されております。
その意味では、この実態をどのようにして把握するとより正確になるのかということを検討してまいりたいと思います。
○三宅委員 どうもありがとうございます。
こちらにいらっしゃいます諸先輩や、特に山井政務官も中心になりまして、平成十四年にホームレスの自立の支援等に関する特別措置法が制定されましたのは御承知おきのとおりでございます。厚労省の説明では、その結果、平成十五年に二万五千二百九十六人だったホームレスの数が、せんだって、直近の数字ですが、三月二十六日に公表されたことしの調査結果では一万三千百二十四人になったとのことであり、統計上は大幅に減少いたしました。
ただ、私は、この数字を果たして額面どおりにとっていいかどうか、非常に戸惑いました。リーマン・ショック以降の経済状況は低迷しております。雇用情勢はいまだ厳しく、年末年始には派遣村もことしも設営されるような現状において、ホームレスが順調に減ってきている。これは喜ばしい結果ではあるんですが、調査結果がちょっと腑に落ちないところがございます。
昨今、ネットカフェ難民など、いわゆるホームレスが新しい形態に変質しているのではないかという可能性も考えられます。お伺いしたところ、野外で生活している人をホームレスというふうに呼ぶというようなことも教えていただきました。
既に法が施行されて八年になりますが、山井政務官は、御自身が携わりましたホームレス自立支援特別措置法を現在どのように総括され、どのように御評価されていますでしょうか。
○山井大臣政務官 三宅委員にお答えを申し上げます。
やはり私の実感としても、ホームレスの方々が減っているはずはないのではないかと思っております。
それはどういうことかというと、ホームレスの方の定義をやはり広く変えていかざるを得ないだろう。具体的に言いますと、ネットカフェを転々とされている方々、また、ファストフード店で泊まっておられる方々、屋根のあるところには住んでいるけれども、いわゆる定住するところがないという方はどんどんふえていっておられると思います。
三宅委員御指摘のような問題意識も私たちも持っておりますので、来年度に、サンプル的ではありますが、ネットカフェにおられるような方々も含めた広い意味でのホームレスの方々の調査をしていきたいというふうに考えております。
そして、委員御指摘のように、私が議員になって初めて党の仕事をしたことの一つが、ホームレス自立支援チームの事務局長を、当時の鍵田節哉会長のもと、させていただきまして、ホームレス自立支援法を八年前につくるお手伝いをさせていただきました。この法律は平成二十四年の八月に十年を迎え、見直しになりますので、ぜひ三宅委員とも一緒になりまして、もう少し広い意味でホームレスの方々ということをとらえて、対策に取り組みたいと考えております。
○三宅委員 ありがとうございます。同じ認識を持っていただいていることに、本当にほっとします。
実は、今、山井政務官がおっしゃっていたとおり、この問題は、私たち全員が持っているホームレスに対する基本的な考え方の、認識のずれだと考えています。この二つの調査の開きの中にそれがあらわれてきていると思うんですけれども、まず出発点として、なぜホームレスにならざるを得なかったのかという考え方から始まって、見直すべき時期に来たのではないかと思うようになりました。
これはまだまだ推論の域を出ませんが、資料二にありますように、ホームレスの方で、もちろん、御自身の意思でホームレスになられる方もいらっしゃいます。しかし、表面では見にくいですが、かなり多くの方が何らかの知的障害ですとか発達障害、認知障害、精神障害を有している可能性があるのではないか、そういった部分も考えられるのではないかというふうに思います。
つまりは、ホームレス状態にあるということは、いろいろなことを含めて、何らかの知的機能のハンディが大きな要因となっているのではないか、そこのところの研究調査をもっと国が真剣に進めていただきたいと本当に強く今は思っております。その意味では、専門家の方々が行った、ぼとむあっぷ研究会のこの調査、非常に衝撃的な数字でありまして、この数字は恐らく多くの方がごらんになって驚かれたことだと思いますが、これは画期的なことだったと私は高く評価しております。