続きです。
(三宅)
あぁ、民事で。これはサインさせちゃうってことですね。そうですね。でも、今のまさに、私本当に今議席がないのが残念なんですが、その求人票の問題は前から気になっておりまして、やっぱりよくあるのが正社員にあたかもなれる可能性があるようなことを面接でほのめかしたり、「頑張れば・・・」みたいなところもあると思うんですけれども、そういうところですとか。あと、よくなんか「100人募集」って書いてあって、「本当に100人募集してるのかな?」ということもあるんですけれども、どうも求人率を高くするために水増ししているんではないかなって思うんですけれども、その辺はいかがですか? 有効求人倍率ですね。有効求人倍率を高くするために、なんか水増しされているように感じる時があるんですけれども。
(今野)
求人の数はちょっとわからないですが、中身について本当にデタラメ・いい加減なことを書けてしまっている。特に「正社員になれますよ」なんていう話は、特に面接で言われて、本当になれるのかどうかわからないということが、本当によくありますよね。
(三宅)
そうですよね。今も「空求人が本当にたくさんある」というお話とか、コメントで来てるわけなんですけれども、「実際の労働条件が違う」とか、そういうようなご意見も今いただいております。
(今野)
ぜひ労働相談に来ていただきたいんですが、何でこんなことが横行するのかと言うと、簡単なことで、ある弁護士さんが本とか雑誌に書いてるんですけど、こういうことなんですよ。「どうせ違法なことを会社がやっても、相手は裁判になんて訴えてきません」。例えば、さっきの新卒の人が後から「80時間込みだ」と言われたからって、辞めて就職活動をやり直したり、ましてや裁判を起こしてくるなんていうことはあり得ない、ということなんですね。だから「いくらでも違法なことをしても何も問題ないですよ」というようなことを、実は本に書いてあったりします。ですから、争わなければもっともっとそういうことをされてしまうわけです。一件一件はやっぱり大変なところもあるんですが私たちの支援団体もありますから、やっぱり何とか泣き寝入りしないようにしていくということが大事なのかなと思いますね。
(三宅)
本当にそうですよね。あと、まだ「入ってしまった企業は」っていうところはあるにせよ、それもダメですけれども、最近言われている「ブラックバイト」。「バイトなので辞めればいいじゃないか」というような言われ方もするわけですけれども、これが辞めれないというのは、どういう背景があるというふうにお考えでしょうか?
(今野)
まず、学生の方の貧困化が進んでいますよね。親の仕送り額というのはものすごい勢いで今減っていますから、それなしでは学費が払えない。学費も上がっているわけです。学生の親がお金がないのに今度は大学の学費が増えるとなると、結局それは奨学金で借金をしたりとかアルバイトで穴埋めをしないと生活ができません。それが一つですね。
あと、実はそれだけではなくて、企業の側が学生をより「戦力化」しようということに今、積極的に取り組んでいるんですよね。なぜかと言うと、時給がものすごく安いからです。フリーターとかに比べても安いわけです。だから、学生をなるべく多くその店舗の運営で中心的に使おうとする。特に、さっき出てたサービス業ですね。サービス業では「なるべく長く安く働かせたい」というのがありますから、一番時給の低い学生をなるべく多く長くシフトに入れたいというふうに考えているわけです。学生たちがいないと成り立たないような経営の仕方をする企業もあります。学生が休むともう店が開けられないような店舗は今、世の中にたくさんあるんですね。
(三宅)
けっこうそういう事件も起きましたよね。学生が、アルバイトが集まらなくてお店が開けないっていうね。
(今野)
そうなんですね。そういう状態になると、学生の方は責任感を感じてしまうんですよ。だから、「自分が行かないとお店が回らない」とか、逆に店長さんが過労死しそうなぐらい働いたりするわけですね。行かないとその店長が休めないとなると、「授業を休んででも、あるいはテストを受けなくてでも行くしかない」というふうに思ってしまう。だから、「貧困化してるから学生は働かなきゃいけない」という事情もあるんですが、一方で企業がもう学生なしじゃ成り立たないような労務管理をしていて、そこで学生がやっぱり巻き込まれていってしまうということですね。そういうことが背後にあるんだと思います。
(三宅)
そうすると、責任感があるまじめな学生ほど、またそういう貧困な環境にある学生ほど、そのブラックバイトから抜け出せないということがあるという現状ですよね。
(今野)
そうですね。
(三宅)
やっぱり「ブラックバイトを雇っている会社」は、イコール「ブラック企業」ですよね?
(今野)
そうですね。やっぱり若い人たちの生活を完全に無視して労務管理を設計してますから、そういうのは「ブラック企業」と言っていいと思いますね。
(三宅)
そうですよね。しかしそれにしても、今回の国会はもう気が気じゃないんじゃないですか?今野さんも。
(今野)
そうですね。残業代ゼロ法案は本当に、これだけブラック企業とか過労死が社会問題になってる中で、こういうものを通すという方向に行くのかと、大変やっぱり衝撃・ショックでありましたね。
(三宅)
私も本当にこの残業代ゼロ・・・、1回目の安倍(晋三)政権であれだけ批判をされて断念をして、ちょっと言葉は悪いですけど、懲りたかと思いきやパワーアップして戻ってきたみたいな感じなんですけれども、私もいろいろ雇用と福祉がライフワークなんですけれども、結局のところは全てやっぱり雇用にたどり着くじゃないですか。社会保険料にしても何にしても未納率が高くなっていくというところで、やっぱりしっかりと安定した雇用、まぁできたら正社員ということで、そういう中で年金保険料含めて社会保険料、様々なものが払われていくということで、当然どんどん正社員が減っていく中でそれが払われていかないと、今現在でも実際「本当に6割もあるのか」というところもあるわけなんですけど、そうすると税金も減っていく。消費も回らない。企業は一時的に人件費は削減できるかもしれませんけど、景気にとっては決していいことじゃないと思うんですけど、どうでしょうか?
(今野)
景気ももちろんそうなんですけれども、もっとさらに長期的に深刻になるのは人材育成ですよね。今、少子化で若い方々がもっと少ない人数で日本の経済を支えていかなければならないと言っている時に、若い方をたくさん採って次々次々短期的な利益のために使い潰している。こういうことをしていたんでは、将来の産業の担い手が間違いなく不足してしまうということになりますから、そうするともう中長期的にも日本で産業を興したりとか経済成長していくということは、根本的にできなくなってしまうということだろうと思います。
⑥に続く