続きです。
(今野)
本当にその通りです。
(三宅)
やっぱりあれですか? 自分の身を守るためには、先輩方の話を聞いたりとか調べたりとかしながら、福利厚生を含めて、またそういう労働環境を含めていい所をきちっと探していくっていう、目先のお給料ではなくてってことですかね?
(今野)
そうですね。あと、契約書をしっかり出している会社と出していない会社でちがう。やっぱり違法な傾向のある会社というかブラック企業は、きっちりとした情報公開をしてないという場合が多いんですよ。契約書も結んでなかったりとかですね。だから、やっぱりその労働条件の明示をやってしまうと、なかなか「嘘でした」とやりにくいということがあって、その情報公開についてあるいは契約の中身をちゃんと明示して書面を作らなければならないということに関して、取り締まりを強めるだけで、それなりに効果はあると思うんですね。
だから、本人から聞くことが難しかったり本人もよくわらかないままになっているようなことを、やっぱり国がしっかりガイドラインを作るべきです。企業に「契約の中身をはっきりしなさい」という当たり前過ぎる話なので、それに反対する人は、いないはずです。ですから、もっともっと「契約の中身をちゃんと公開しなさい」あるいは「ちゃんと契約書を厳密な形で作りなさい」というようなことを徹底させるだけでも、多分大半効果があるんじゃないかなというふうに思います。
(三宅)
そういう形で自分の身を守っていくということですよね。
(今野)
そうですね。
(三宅)
今、あれですか? まさに3月から解禁ということで、これから就職活動が始まっていくってことですよね?大学生は。
(今野)
そうなりますね。これからですね。
(三宅)
今、一つの会社にずっといるというようなことも少なくなっているようには聞いてますけれども、それでもやっぱりきちっと就職するにあたって、もちろん正社員になること自身大変なんでしょうけれども、まずはきちっと見極めて入っていただきたいというところがあると思いますし。ブラック企業大賞は、今どんな形で関わっていらっしゃるんでしょう? 審査員もやられてるっていう形ですか?今野さんは。
(今野)
私自身ではなく、私のNPOのスタッフが入っていますが、私自身は入ってないですね。
(三宅)
そうですか。変な話これ、圧力みたいなのってありますか?
(今野)
それは多分ないと思うんですが、ただやっぱりいつ名誉棄損で訴えられるかわからないですから、その辺は気を配って選考していると思いますね。
(三宅)
あぁ、やっぱり常に訴訟リスクがあるからということで、だいたい見てると実際労災が起きたりとか、また労災が起きているんだけど認めてないとか、謝罪をしていないとか、裁判になっているとか、極端に離職率が高いとか、いくつかいろんな条件があると思うんですけれども、それで名前が挙がってきてるわけですが、やっぱり外食産業が多くなってますよね?
(今野)
そうですよね。はい。
(三宅)
その外食産業が多くなるっていうのは、今言ったように、店長さんがおそらく正社員一人っていう中で、突然もしアルバイトが休んだら自分がやっぱりその分やらなければいけないとかいろんなことがあって、業務がおのずと多くなるということですよね。
(今野)
そうですね。最小限の人数でとにかく多くの店舗を回す。1円でも利益を出そうと思ったら、これが一番手っ取り早いわけですよ。だから、どうしても少ない人数で多くの店舗を運営するという傾向になっていってしまうわけですね。
(三宅)
あっ、そう言えば、一時期聞いて最近出てこない「限定正社員」はいかがでしょうか?
(今野)
限定正社員は、ちょっと話は複雑になってしまいますけど、私は基本的に肯定派なんですね。ただ、この間政府から出ている限定正社員制度は、いわゆる本当の意味での限定正社員じゃないってところがポイントで、企業の中での格差処遇をしていくということなんですね。「限定正社員」っていろんな意味があるんです。もう一つ「ジョブ型正社員」っていう用語がありますけど、何を意味してたかと言うと、それこそ「仕事の命令はここまでにする」ということを会社を越えて様々ところで、例えば飲食業界だったら「何時間までしか働かせてはいけない」とか、そういうことを取り決めていこうと言って出てきたのが「ジョブ型正社員」っていう言葉だったんです。
これが、解雇しやすくてしかも企業の中の処遇に過ぎないから、つまり「会社の中で結局ノルマがいくらかかってくるかわかりませんよ」という中身にして、「これが限定正社員だ」というふうに政府は再定義してしまったんですね。だから、全く言葉の意味が反対になってしまった。だから、非常にそのやり方として巧妙だったとも言えるし、非常に悪意のある用語の使い方をしたなということを私は思ってますね。
(三宅)
そうですよね。今、ご質問というかコメントをいただいてるんですが、やっぱり余剰人員っていうのはある程度必要ですよね?いろんな意味で。
(今野)
そうですね。余剰どころか、最低以下にするんですよ、要は。必要な人員すらいないという状態で働かせると、結局そこの人たちは必死になりますよね、もう。それで我を失っての状態で何とか働かせ続ける。こういうふうなことをわざとやってるわけですね。ですから、余剰どころか不足状態ということですね。
(三宅)
そうですよね。本当に実際は余剰人員がいた方が、そういう過労死ラインまで働くってことが起きないわけですし理想的だと思いますけど、今おそらく余剰人員がいるような会社は、ほとんどないんじゃないかなというふうにも本当に感じます。
本当にすいません、長々と。間もなく50分になるわけなんですけれども、「2度あることは3度ある」ということで、例えば派遣法なんかも「何とか今回も阻止したい」というふうに厚生労働委員も言っておりますし、残業代ゼロ法案はいくら名前を変えたところで残業代ゼロ法案であることには変わりはありませんし。しかもあれ、裁量労働制という新しい部分で「営業職は今度その別の枠で」っていうようなことも出てきて、いろいろあれ小出しにしてますよね。心配な材料がだんだんと出てきて何となく本当の目的が見えてきたように思うんですけれども。
(今野)
そうですね。と言うか、ずっとですよね。特に派遣なんかは、今法改正の話をしている一方で、もう次の法改正の話が出てますからね。ですから、もう矢継ぎ早にどんどんくるんだろうというふうに思いますよね。
⑧に続く