水の安全を民間に丸投げ。水道民営化「知らない」が日本人の69.3%というヤバさ
お水の問題は、お水のジャーナリスト橋下淳司さんにいつも教えて頂いています。
水にかかわる生活意識調査のアンケートで、なんと69.3%が水道民営化を「知らない」と回答したとこと。民営化されたことさえ知らなければ、問題点などわからないでしょう。
半数以上が知らない水道民営化
ミツカン 水の文化センターが「水にかかわる生活意識調査」の中で水道法改正について聞いたところ(東京圏、大阪圏、中京圏の1500人にアンケート)、水道法改正について、なんと63.1%が「知らない」という結果。「聞いたことはあるが内容までは知らない」が28.6%、「聞いたことがあり内容まで知っている」は8.3%でした。
※参考:2019年 第25回調査:調査報告│ミツカン 水の文化センター
ここが大事なことですが、「水道事業の民間運営がしやすくなったことを知っているか」については、「知らない」がなんと69.3%だった。
民営化されたことさえ知らなければ、その問題点などわからないでしょう。
水道事業が民間運営になった場合、「水の安定共有維持」「水道管の老朽化対策」「水道料金」「水の安全性と質の確保」「サービスの地域格差」とさまざまな問題が懸念されています。これらの5つの項目で「悪くなる」が「よくなる」を上まわったので、漠然とした不安は皆さんお持ちなんですね。大事な情報です。
水道法は現在、パブリックコメント募集中です。賛否両論のまま、2019年10月1日に施行
2018年12月6日にこっそり可決。国会議員で関心を寄せていたのは私が知る限り数人。今年2019年10月1日に施行されます。
施行前のパブリックコメントは、以下などがあります。
・「水道施設の技術的基準を定める省令の一部を改正する省令(案)」に関する御意見の募集について
・「水道法施行規則の一部を改正する省令(案)」に関する御意見の募集について
自治体が浄水施設の所有権を保持しながら、運営権を民間企業に譲渡できるコンセッション方式を導入できるようになったのが「ウリ」ですが、ここに対して賛否両論です。
どう違う?業務委託とコンセッション方式
業務委託(責任は自治体)は、水道料金は自治体から業務委託量に応じて企業に金額が支払われます。
コンセッション方式では、施設の運営権が民間企業に売却されます。事実上の運営責任は企業に移行。水道料金は民間企業に入ります(これが不安の元。料金は民間企業の思うまま?と不安になりますよね)。
では、「水道」という重要な公共インフラの「責任」は本当に民間に?
実際は企業との契約とはいえ、自治体の管理監督責任があります。しかし、自治体職員は契約のプロではありません。契約は長期におよびます。その間に行政の担当者は変わって行きます。現場の技術や業務がわかる職員が変わったり少なくなると(実際に減っています)契約更新時に、契約した企業の運営や契約変更の条件が適切か否かなど判断できません。
「水道施設運営権の設定に係る許可に関するガイドライン(案)」が作成され、こちらもパブリックコメントが募集されています。8月20日までです。
地方では徐々に始まっているけれど...
コンセッション導入に積極的な宮城県が知られています。
「みやぎ型管理運営方式」は、上水、工業用水、下水の計9事業の運営権を一括して民間企業に譲渡するものです。
今年9月の県議会に実施に向けた条例案が提出され、2020年秋に事業者選定、2021年度スタートという計画だとか。
浜松市では1月31日、上水道へのコンセッション導入延期を表明しました。
水道という重要インフラの責任が民間へいき、コンセッション方式でどう変わるんでしょうか?
コンセッションが水道事業の維持のために有効という考えに変わりはないようで、「社会全体でコンセッションへの理解が高まるまで延期するが、凍結や断念ではない」というもの。つまり「先送り」です。
統一地方選挙前はこればっかり。
経営の厳しくなった水道事業を維持していくための法改正とのことですが、ではなぜ厳しくなったのでしょうか?
人口減少と節約意識の広まりで、水道事業者の料金収入はどんどん減っています。節水型の機器が普及したことはよいことでしょう。
なぜ問題を先送り?水道管・浄水場の老朽化はわかっていたこと。
問題はこれです。水道管や浄水場などの施設が古くなっています。古くなることなんてわかっているのに、なぜ放置していたのでしょうか?
水道事業に携わる職員数は、橋下淳司さんによると1980年には全国に7万6,000人いた水道職員が、2014年には4万7,000人になったそうです。水道職員が減ったことで、水道事業から専門家が消えていくと困ってしまいます。
水道法の話はまだまだ続きます。