みやけ雪子タイトル

2014年11月15日

永田町仮想政治小説「風雲急を告げる」②

官邸前で、タクシーを降りたら、同じ総理番の岸本が仁王立ちしていた。

雑誌情報によると、岸本は、鮎川一郎総理の縁戚らしいのだが、それを聞くのは局内でもタブーとなっており真相はわからない。顔は似ていると言われたら似ている気がするが、そっくりというほどではない。

「早く、早く」とせかされ、一緒に記者会見場に向かう。

先に席を取っていてくれたらいのに・・・と思うが、岸本は育ちがいいせいか、どうも物おじするらしく、こういうときには、後輩の水谷にすぐ頼ってくるのだ。

それに、縁戚だとしたら、なおさら聞きにくいのだろう。

どうせ今日も、質問は私にふるんだろうなと水谷は覚悟する。

それにしても、、官邸クラブは、最近すっかり御用クラブになってしまっている。今日もキャップが事前に官邸に質問をだしているらしく、これを質問するようにと、岸本からメモを渡された。違和感を感じるが仕方がない。

そこには、「今回のGDP速報値を受けてどのような感想をお持ちでしょうか」とある。

つまらない質問だな、と苦笑いしながら、会場へ。

10分前なのでさすがに満席だ。何とか前方に空席を見つけ、席につく。岸本とは分かれてしまったが仕方ない。広報担当の補佐官が近づいてきて、「東西テレビさん、質問は2番目です」と耳元で囁かれた。

異動直後は、官邸の記者クラブは事前に質問の順番まで指定されるのかと驚いたが、今はもう慣れた。情報番組から異動していた水谷はこういった「慣れ合い」が好きではない。

鮎川総理を囲んで時々行われる「女子会」でも、よいしょが苦手な自分が浮いているのは自覚している。鮎川総理は、HHKの谷田記者がお気入りらしい。いくら気にいられたくたって自分にはあんな歯が浮くような原稿は書けないから、気にしていない。むしろ、嫌われても結構だ。

そうこうしているうちに、鮎川総理が会場に入ってきた。フラッシュがいっせいにたかれる。
(③に続く)

注:この小説はフィクションであり、登場する会社、人物などは全て架空のものであることを御承知おきください。

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