みやけ雪子タイトル

2014年11月17日

永田町仮想政治小説「風雲急を告げる」④

総理の会見が始まろうとした、まさにその瞬間、首相補佐官の加藤が慌てた様子で、鮎川総理に近寄り耳打ちをした。一瞬にして総理の表情が青ざめた。

「何だろう」記者はいっせいに、色めきだった。

しかし、すぐ、総理は、気を取り直し、APEC首脳会談、それに続き開催されたG20の報告、そして、予想以上に悪かった7-9月のGDP速報値について、いつものように早口でプロンプターを読み上げた。

この日の朝発表されたGDP速報値、年率マイナス1.6%の数字には、永田町にも衝撃が走った。何しろ、消費税増税にあたり定めた景気条項の名目成長率3%、実質成長率2%からもあまりにもかけ離れた数字だ。これでは、再増税を議論する余地は全くない。

アユノミクスは失敗だったということだ。株価はすでに500円下げである。

しかし、鮎川総理は、なぜか、今日の会見で発表すると言われていた「消費税再増税先送り」については言明せず「慎重に判断する」に留まった。

明日、また、会見をするという。肩透かしである。必然的に、解散総選挙の表明もまだされない。

さきほどの「耳打ち」は気になるが、今はとにかく、この会見の原稿にして、夕方のニュースでは、中継リポートしなければならない。夕方の報道番組「ニュースレボリュ―ション」は、4時55分から。とにかく今は余計なことを考える時間がない。

型どおりの会見が終わり、各社の質疑応答へ。幹事社(月回りで決める記者クラブの取りまとめをする社)がトップ、水谷、そして、HHKと続いた。この官邸クラブの予定調和には、すでに水谷はうんざりで、異動前には、全然違う質問をしてやろうと今から思っている。

そこに、デスクからメールが入った。さっき、遭遇した自動車事故に、どうも帝国銀行の総裁が巻きこまれていたらしい。容態は全く不明だ。事故自体は、さほど大きなものに見えなかったが、乗用車が衝突したまさに後部座席のその場所に、城田総裁が乗っていたらしい。

会見が、終了したのが、3時40分。すぐに国会記者会館に戻って、中継リポートの準備を始めた。そこに、ニュース速報が流れた。「え!?」皆が声をあげた。  (⑤に続く)


注:この小説はフィクションであり、登場する会社、人物などは全て架空のものであることを御承知おきください

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