「帝国銀行 城田総裁が虎ノ門の交差点で接触事故で重体」
今のところ、報じているのはHHKだけのようだ。うちも、帝国クラブの記者が今ごろ、病院に駆けつけているのだろう。
重体って、どのくらい悪いんだろう。
デスクによると、現在手術中らしいが命には別条はないようである。
城田総裁といえば、鮎川総理の「アユノミクス」の一番の立役者といわれている人物だ。鮎川総理は、何よりも株価を気にしており、官邸の自室には、株価を表示するボードがあるとまで噂されている。
会見直前のあの耳うちはこれだったのか、と水谷は気づく。
先日の追加金融緩和は市場にはサプライズだったようで、一時は株価は1万8000円近くまで上がり、円安は117円まで進行した。その、司令塔の城田の不在となると、今後、市場には何かしら影響がでてくるだろう。
しかし、その「アユノミクス」
高給と言われるテレビ局員の水谷だが、今期は広告収入減の影響でボーナスは大幅減。株高株高と言われても、景気がいいとう感覚は正直持てない。国民の多くもそうだろう。しかも、報道記者は、社内規定で、在職中は株取引を禁止されている。
ふと、きがついたら、時計の針は、もう4時50分を指していた。
今日の総理会見はトップニュースなので、出番は、オープニング直後の5時頃。水谷はマイクをつけ、スタンバイをした。
(⑥に続く)
注:この小説はフィクションであり、登場する会社、人物などは全て架空のものであることを御承知おきください