中継が終わり、水谷が目黒の自宅にようやく戻ったのが、夜中の1時半。本当にテレビ局ってブラック企業そのものだ。好きでやっているから、誰も文句言わないけれど、勤務形態は、本当に酷いものだ。出会いもないから、職場恋愛が多くなる。
さすがに、明日の朝回りは、総理番キャップの岸本が変わってくれた。けっこう、いいところがある。っていうか、その前に疲れて動けない!
ILDKの部屋のベットに化粧も落とさず、倒れこむ。
明日はいよいよ再増税先送り、そして、解散・総選挙表明か。鮎川総理会見は、13時から。明日も中継リポートになるだろう。何回やっても、しゃべりは上手くならないが、緊張はしなくなった。しかし、福岡に住む両親は、毎回気が気でないよう。しかし、そのわりには全部録画しているようだから、なんだかんだいって、娘がテレビに出るのは嬉しいらしい。
すでに、「解散の大義なし」と身内からも批判の声があがっているぐらいなので、そこをどう鮎川総理が説明するのかが注目だ。
今頃、官邸でブレーン達が知恵を絞っているのだろうが、第一野党の民衆党も、「再増税凍結」を掲げたので、無理やり、理由を作るんだろう。
国民負担の多い数々の法律の施行が、来年平成15年度から次々と始まる。野党共闘の調整も進んでいないとされている。幸い、株価は堅調なので、アユノミクスのぼろが出る前に、「今しかない」という解散・総選挙だろう。
ふと、携帯が点滅していることに気がつく。驚くべきことに、首相補佐官の加藤から、メールが入っていた。
「明日、10時に僕の部屋に来てください」
(⑩に続く)
注;この小説はノンフィクションであり、登場する会社、人物などは全て架空のものであることを御承知おきください