デスクとすったもんだしたあげく、「城田総裁の容態は尋ねていいが、マーケットの話はNG」という落としどころになった、
水谷にしてみたら、不満たらたらである。
しかし、いつまでもゴネていても仕方ないので、11時からの会見場に向かった。
会見は、「消費税増税は2017年4月まで、延期。景気条項は削除。再延期はない。アユノミクスの成果を判断してもらう、アユノミクス選挙だ」といった内容だった。
予想通り。景気条項の撤廃を明言は意外だった。これは、明らかに、野党の攻撃材料になるからだ選挙にも有利と言えない。恐らく、消費税増税先送りにあたっての、財蔵省のぎりぎりの条件だったんだろう。
それにしても、いつにも増して高揚している様子に、記者席から、「鮎川総理、大丈夫?」というひそひそ声が聞こえる。今日は、HHKを皮切りに、主要な夜のニュース番組に出演することになった。東西テレビにも、もちろん出るので、今日は早目に社にあがって、準備をしなければならない。
政治部記者の水谷ですら、解散・総選挙の理由が全く理解できないので、一般国民にしてみたら、もっと不可解だろう。年末に迷惑な話である。さて、すぐに原稿しなければ、昼のニュースま
で15分だ。
こういうケースのため、「予定稿」というものを先に出している。つまり、こうなるだろうという予想に沿った原稿だ。
今回は、予想できた内容だったので、少しつけ加えるぐらいで済んだ。
岸本がリポートを嫌がるので最近は、水谷が毎日のように画面に露出する結果となっている。今日は、昼、夕、夜と3回だ。
⑫に続く。
注;この小説はノンフィクションであり、登場する会社、人物などは全て架空のものであることを御承知おきください