水谷は、いまだに解散・総選挙の実感がない。
鮎川政権になって、数々の重要法案や政策の転換があった。そうしたタイミングで国民の信を問うのなら理解がきるが、「なぜ、今?」というのが率直な感想だ。
まさか「野党共闘の準備が整っていない」という理由だけではないだろうと信じたかったが、首相側近が「この選挙は、鮎川政権が長く続き、安定させるため」などと本音?をブログで書いたため、その「まさか」が裏付けられてしまった。
しかし、水谷がどう思おうが、どんどんと物事は動いていく。
各議員、いや前議員は、すでにおのおのの選挙区へ。永田町はひっそりとしている。一体何人がここに戻ってこれるのだろう。
水谷は、官房長官番となったので、選挙中は菅谷官房長官の「追っかけ」をすることになる。菅谷は今晩一旦地元の静岡に入り、明日からは全国遊説となるようだ。簡単な予定表は貰えるようだが、選挙情勢を見てその都度変わっていくものと思われる。
官房長官が入るのは、注目選挙区や僅差が予想される選挙区だ。おのずと候補者も張り切る。今回は人気者の尾達知子が資金スキャンダルで動けないので、応援演説も人手不足だ。全国的に人気があり、自分の選挙区を離れられる人というのは、大政党でもそうそう多くはいない。
鮎川総理は、被災地から遊説スタートとなるようだ。
水谷も一旦自宅に戻り、準備をして、菅谷に同行して今晩から静岡だ。次はいつ自宅に戻れるやらとため息をつく。とりあえず、1週間分の荷造りをすることにした。足りなくなったら買うしかない。
この選挙が終わっても、7月にはまた参議院選挙がある。先のことを考えると、それだけで疲れるので目の前のことに邁進するのみだ。
⑭に続く。
注;この小説はノンフィクションであり、登場する会社、人物などは全て架空のものであることを御承知おきください